西岡純一さん、原正人さん、SYOさん登壇!『ARCO/アルコ』公開記念トークイベントレポート

いよいよ公開が迫る映画『ARCO/アルコ』の魅力を多角的に掘り下げるべく、スタジオジブリ広報部長・学芸担当フェロー、東京アニメアワードフェスティバルのディレクター西岡純一氏と、バンド・デシネ翻訳家・紹介者の原正人氏、そしてMCに映画ライターのSYO氏を招き、日本のアニメとフランスのバンド・デシネ、それぞれの最前線を知る二人のトークイベントを実施いたしました。

西岡氏は「アヌシー国際アニメーション映画祭で『ARCO/アルコ』を観たんですけど、ジブリの影響を感じました。『もののけ姫』を彷彿とさせる壮大な音楽背景の描き方も似ている思いました。随所にオマージュを感じながら観ていました」と至る所に“ジブリのDNA”を感じたと語る。そんな西岡氏はウーゴ・ビアンヴニュ監督にインタビューをして色々と聞き出したそう。「監督は本作を作ったのが38歳の時で、宮崎駿が『ルパン三世 カリオストロの城』で映画デビューしたのも38歳の時なんです。彼もこれからきっとすごい大監督になるんじゃないかなと感じた」と期待を寄せる。

原氏は「監督はもともとバンド・デシネも出版していて、2014年に最初のバンド・デシネを出しているから、10年以上バンド・デシネ作家でもある。もともとアニメをやりたかった人でもありまして、ゴブラン(フランス屈指のアニメーション学校)の出身で、そこはフランスでもトップで、エリートが集まるところ。そこを卒業してアニメ界で活躍する人もいれば、バンド・デシネで活躍する人もいる。監督はその両方なんです。バンド・デシネの系譜という点からいうと、日本でもよく知られているメビウスという人がいて、イラストレーション、アニメーションの仕事も結構やっていて。そしてそのメビウスとルネ・ラルーの『時の支配者』という作品が良く知られている。そことの連続性を感じさせる」とバンド・デシネの観点から監督に言及する。

「キャラクターがすごく少ない線で描かれているんだけど、とても立体感があるんです。日本のアニメは顔が記号で目がぱっちりとあって、鼻が無くて口がパクパク動くみたいな感じで、全然立体にすることができないんです。でもこの『ARCO/アルコ』ものすごく立体で会話してたり演技してたり、リアルなんです」と西岡氏。「背景もすごく魅力的。あと動きですよね、『時の支配者』などは日本のアニメ的な動きとかはちょっと違って、それが魅力なんだけど、それに加えて日本のアニメがやっぱり本当に好きで取り込んでいるんだろうな」と原氏も続ける。そのアニメーションの動きについて西岡氏は「3人組が乗っている車あるじゃないですか、あれがぴょんぴょん跳ねたりする、あれはルパンっぽいなとかね。これは完全にジブリを意識しているなと思ったのは、オープニングの方でアルコが動物の世話をしているじゃないですか、そこで水が流れているところ。あそこは実は今はジブリ美術館でしかやっていないんですが、『星をかった日』という宮崎監督の作品にそっくりなんです。もう至る所にそういったオマージュを感じるんです」と嬉しそうに話した。

原氏は「本作に出てくる3人組はとんちんかんな感じで楽しいんですけど、彼らがしているサングラス、監督のバンド・デシネでは出てくるキャラクター全員がかけてる作品が多くて。ダサくも感じるけれど、かっこよくも見える。今、世の中全体で80年代のリバイバルみたいなことが起こっているかと思うんですけど、そういう雰囲気も感じる」と話すと、その3人組を西岡氏は「彼らは東宝特撮のオマージュかなと思った。昔の宇宙人って必ずああいうサングランスをかけている」とキャラクターの衣装からも日本の作品からの影響に言及する。

本作の終盤でのアルコの家族の描かれ方に触れ、原氏は「なかなか日本のアニメとかでああいったぎょっとするような演出はあるだろうか?大人向けですよね。大人向けという部分はそのシーンに盛り込まれていて、監督はそれを良しとしている。私の勝手なイメージでいうと、制作に関して日本のアニメは製作委員会だったり、色んな空気を読まなくちゃいけない雰囲気があって。その中でお客さんの方向を向かなくちゃいけないところがあるんですが、フランスの制作の良い点としては、アーティストの矜持は持っている気がする。バンド・デシネもアニメもそう、そういった点が本作にも出ていると思いました」と分析する。
西岡氏も「シナリオがしっかり練られていて、伏線を回収する、その辺がすごい気持ちいいですけど、そういったものが至る所にあって。ほんとによくできてるな」と称賛する。

西岡氏はジブリとの共通点について「非常に強い共通点があって、アルコとイリスの二人だけで冒険するじゃないですか、これジブリ作品と同じなんです。つまりパズーでもシータでも千尋でも、親とかがいたら冒険できないんです。この作品でも親は遠くにいていないじゃないですか、ミッキというロボットしかいなくて。子供同士で冒険ができてエンディングを迎えることができる。そこがジブリに構造が似ている。宮崎監督も『千と千尋の神隠し』ですぐに親を豚にしたのは、お父さんとお母さんがいたら冒険できないでしょってことで。そういうところにも非常に影響を感じました」と語る。

SYO氏は「自分が見てきた映画、例えば『インターステラー』とかみたいな流れる時間が違うっていう、SF映画好きからみてもニヤッとしてしまう。そして自分が好きなことを作中にこんなに入れても作家性というか独自性がちゃんと立っているというのは相当すごいことですよね」と監督に言及。
原氏も「バンド・デシネでも“継承”っていう、次に伝えるみたいなところをすごく自覚している感じがします。作画が演出レベルでもいろんなものを取り込んでいるんだけれども、これをこういうエンタメとして出してるというのはすごいなと思いますね」と続けた。
西岡氏も同じようなことを宮崎監督も庵野監督も言っていたとして「オリジナルっていうものは無いとは言わないけれども、先人が作ったものを受け継いで自分が何かそこに加えたり消化したりして、次の世代に渡していく。アニメーションっていうのは通俗文化なんだから、そういうもんなんだ、と。だから誰かの影響をうけているとか、これは誰かのパクリだとか言われるけれども、それは違うんだ。影響を受けて、先人からもらったものを次の世代に渡すと。だからこの監督からもそれをすごく感じますよね。こうやってバトンは渡されていくんだ」と話していたことを明かした。

最後に西岡氏は「オリジナルのこういった海外のアニメーションというのはとても魅力的な作品がたくさんあって、ジブリ美術館もそういった作品の配給もやっているんですけど、この『ARCO/アルコ』はそういった作品の中でも珠玉の一品です。SF的でジブリの影響を感じるし、監督の意欲作だし、シナリオも素晴らしい。ぜひヒットしてもらいたい。日本のアニメとか漫画とかがこれだけ世界に出て、日本人は誇らしいとか思っているけれど、世界にはもっともっとすぐれた作品いっぱいありますよ」と熱く語り、締めくくった。

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